米国の宝石商〈ツェル・ブラザーズ〉が、当時北米で展開していたタートル・デラックス名義の腕時計。独特のラグデザイン、堅牢なフランソワ・ボーゲル製のSSケース、そして美しい文字盤デザインは、まさに製造を手がけた〈モバード〉の名品「アクヴァティック」シリーズのそれ。

特に文字盤は、本家モバード名義の腕時計でも希少なブレゲ数字のエンボスインデックスを中心に、ツートーンダイヤルを駆使したアール・デコが息づく見事な仕上がり。細身のバトン針、レッドアローの秒針といった軽やかなデザインを基調に、幾何学的な線の配置やツートーンの仕上げなど、1940年代らしいクラシカルなディテールが盛り込まれたハンサムなルックスです。

アクヴァティック同様、独特のラグデザインを伴ったラウンドケースは、パテック・フィリップをはじめとする名門が愛した防水ケースメーカー〈フランソワ・ボーゲル〉製です。ほぼノンポリッシュで、ラグまわりの見事な多面カッティングに力強いエッジを残すグッドコンディション。とりわけ注目に値するのは、通常28mmという小振りなサイズにもかかわらず、こちらは30.5mmと希少なラージサイズという点です。インパクトのあるラグデザインとともにサイズも比較的大振りなため、エレガントにして力強い存在感を放っています。

搭載するムーブメントは、モバード初期から様々なモデルに搭載され高い評価を誇る出車式センターセコンドの名機、CAL.475 (SC)。軟鉄の内蓋を伴った二重構造のケースも特徴的です。

デザインコンシャスでありながら、その堅牢性と機能性で名を馳せるモバードならではの一本。