1930年代に製造されたと思われる腕時計。手掛けたのは全く未知のブランド。しかしこの腕時計の魅力はそこではないということは言うまでもありません。ブランドバリューとはかけ離れた、高すぎるデザイン性とクオリティ。これに尽きます。 まず文字盤デザイン。とにかく線が横溢する幾何学的で重厚感に満ちたアール・デコの様式美。セクターダイヤルをはじめとして、レイルウェイ・インデックスも含めると4重に折り重なる円周と、さりげなく配されるツートーン仕上げ。アラビア数字は3方のみで、スモールセコンドをある種6のインデックスに見立てた配置もまた見事です。ここまで時代性を捉えた美しいデザインの文字盤は、有名ブランドでもほとんど見ることはありません。 次にケース。1930年代という時代背景においてオールステンレススチールという時点で高級ラインであったことは明らか。しかもそのデザインは一般的なラウンドケースのスタイルのように見えます。しかしよく見てみるとベゼルの上下の部分に本来あるせり出しがなく、逆に両サイドのせり出しが異常に大きい。しかもその両サイドのせり出しは、ラグとスムースに直結していて巨大なツノのようなフォルムを形成し、この腕時計全体のシルエットをユニークなものにしています。 さらにムーブメントにも細かいこだわりが凝縮されています。ほぼ全てが曲線で構成されたブリッジの美しいデザインやレイアウト。さらにそのひとつひとつのパーツエッジは滑らかに面取りされているほか、各所に配された穴石はゴールドのシャトンに埋め込まれています。 着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。イタリア・トスカーナ地方の名革《ブッテーロ》を使用しています。深い経年変化も楽しめるほか、腕に馴染みやすくその着用感の良さも魅力的です。 » "anonym" OPEN-END LEATHER BELT (BUTTERO / BROWN)