〈スミス〉が手掛けた傑作モデル「デラックス」。文字盤上に配された”SMITHS”のブランド名と誇らしげな王冠マーク、そして”DE LUXE”のモデル名。「デラックス」シリーズがおそらくスミスの腕時計の中で最も高い人気を誇るのは、そのデザインの豊富さもさることながら、信頼を寄せられる高い機能性にあるとも言われます。そしてその機能性を支えたのは英国製の自社ムーブメントでありました。 様々な文字盤、ケースデザインのバリエーションが存在するスミスのデラックスですが、こちらは中でも幻の存在としてスミスコレクターに知られる35mmの「マグナム」と呼ばれる大型ケースを採用した極めて希少な一本。スミスの腕時計では比較的大型なデニソン社のアクアタイトケースでも34mmで、この35mmは金無垢のドレスウォッチでは最大級となります。 その希少なマグナムモデルの中でも極めて製造本数が少なかったのがこちらの2トーンダイヤル。やや大振りなアラビア数字と楔形インデックスという1950年代に流行したミッドセンチュリースタイルに加えて、文字盤の内側にミニッツインデックスという1920年代のアール・デコ・スタイル、さらに文字盤中央部とアワーマーカーの部分のテクスチャーをそれぞれ異なるトーンで仕上げており、視点を変えるたびに刻々と異なるトーンを見せるギミック、そしてそれが生む凝縮感が魅力的です。 こちらの金無垢ケースを手掛けたのは、デニソン社と並んでスミスが数多く採用していた〈BWC(British Watch Case Ltd.)〉で、”LONDON MADE”の刻印がトレードマーク。裏の刻印は"WHITEHOUSE SPINNING CO. LTD"という紡績会社が退職する社員向けに贈呈したプレゼンテーションウォッチという内容を記しています。 ムーブメントはスミスが誇る名機、CAL.1215を搭載。優美な流線形のレイアウトや独特の粒金仕上げが美しいムーブメント。厚みがあり頑丈なパーツで構成される質実剛健な作りも見逃せません。 着用するベルトは〈アノニム〉のブリティッシュグリーン。英国で1860年創業という長い歴史を持つタンナー〈J.ベイカー〉社のブライドルレザーを使用しています。同社のブライドルレザーはオークバーグの皮から抽出するタンニンエキスを用い、1枚の皮に1年半という非常に長い時間をかけるという、2000年前と変わらない製法にこだわるユニークな存在で、重厚かつしなやか、それでいてモチモチとした質感が病みつきになります。