1940年代の《ウエスト・エンド・ウォッチカンパニー》の腕時計が入荷しています。 ウエスト・エンド・ウォッチカンパニーは、1886年にスイス・サンティミエで創業された、世界で最も古い時計メーカーのひとつとしても有名。主にインドを植民地化していた当時の英国軍向けに腕時計を供給しており、映画「アラビアのロレンス」で知られる当時のイギリス陸軍将校、トーマス・エドワード・ロレンスもウエスト・エンドの腕時計を身に着けていたと言われています。「ソワール」はウエスト・エンド社の腕時計でも最も成功したモデル。ヒンドゥー語で「戦士」を意味するモデル名の通り軍用時計としてリリースされたシリーズで、第一次世界大戦以降の主力ラインとして人気を博しました。 こちらはアール・デコの幾何学的デザインを物語る、アラビア全数字とレイルウェイ・インデックスが文字盤を彩るミリタリーテイストが魅力的な一本。さらに目を引くのは、鮮やかなブルースチールのスペードタイプの時分針。ボリューム感があり、この腕時計の主役と行っても良い存在感です。6時位置のスモールセコンドも、レイルウェイを含んだクラシカルで味わい深い仕上がり。 小太りでユニークなケースもウエスト・エンドのチャームポイント。こちらのケースはフランソワ・ボーゲル(François Borgel)が手がけた「ボーゲルケース」と呼ばれる防水ケースが採用されています。ねじ込み式の裏蓋を外すと、"FB"のイニシャルと鍵のロゴマークが蓋の内側に見られます。ステンレススチール独特の硬質感、スクリューバックといったタフな仕様も魅力的。ケース内部には軟鉄製のインナーキャップを備えているため、より防塵性・耐磁性が高い構造となっています。 同モデルで"Civil Service in India"を意味する"C.S.(I)"の刻印を持つ個体も散見されるように、当時イギリスの植民地であったインドにおける民生役人に支給された腕時計で、現地の高温多湿・塵埃の多いタフな環境下での使用が想定されています。 搭載するムーブメントは、おそらく《フォンテンメロン(FHF)》社のCAL.30をベースに、三番車と四番車の受けをそれぞれ独立させたレイアウトが特徴の自社ムーブ。コストのかかる構造ではありますが、これにより強度とメンテナンス性を高める効果が期待出来ます。クラシックな粒金仕上げはウエスト・エンド社のムーブメントに見られる特徴のひとつ。