1940年代の《スターリナ》の腕時計が入荷しています。 特に有名なブランドではないものの、質実なステンレスチールケースや文字盤の秀逸なデザインは、ネームバリューを補って余りある魅力があります。 アラビア数字のスケルトンインデックスと、夜光のドットインデックス、そしてラインのみで構成される、極めてモダンかつ上品な文字盤デザイン。加えてステップベゼルや強調された力強いラグデザインによる絶妙な重厚感で、唯一無二と言っていい存在感を放っています。ブルースチール製の細身のバトン針が使用されているところにも、デザイナーのセンスが光ります。ほとんど使用感の無いビンテージのカーフスキンベルトの風合いも良く、高級感のある仕上がりです。 ムーブメントは《A・シルト》社のCAL.984を搭載。同社は1926年に設立されたムーブメント製造会社連合とも言える《エボーシュSA》の中心的存在で、1896年にアドルフ・シルトがスイス北部のグレンヒェンで創業したエボーシュメーカーです。 このモデルの特徴は、駆動の際最も忙しく動く部位のひとつであるガンギ車の受け(ブリッジ)を独立させ、メンテナンス性を高めている点。当時多くの腕時計に採用されていた、いわば汎用的なムーブメントではありますが、こちらは通常15石に1石加えられ、16石の受け石が用いられたハイエンドカスタムモデル。ストライプフィニッシュのブリッジに加え、受け石にゴールドシャトン(受け石を保護する高級部品)が追加されており、クオリティ指向の強さが伺えます。 誰もが知る有名ブランドでなくてもデザイン性に優れ、十分なスペックを持つ良品が存在することを証明する逸品。1940年代とはそんな時代であったと思います。