隠れた実力派ウォッチメーカー〈オクト〉が1940年代に製造したこちらの腕時計は、アール・デコと時計の機能性が高次元で融合した当時の典型的なデザイン性が凝縮された一本と言えます。 特に目を惹く文字盤デザインはいわゆるセクターダイヤル。文字盤の中心を起点に放射状に扇形を形成するようなインデックスの配置がその特徴で、この個体では5分おきに置かれた太い夜光のバーインデックスがその一部となっていて、12、3、6、9のメジャーアワーのみ独立したアラビア数字で強調する異様なルックスは、ほとんど1930〜40年代にしか見られません。 さらに、時分針に備えられた四角形のモチーフは夜光塗料を伴っており、先述の5分おきの夜光バーインデックスと呼応。文字盤と針とが幾何学的に一体化する、まさにアール・デコの真骨頂をとらえた見事なデザイン。 また異彩を放つ独特のSSケースのデザインは、名門中の名門〈パテック・フィリップ〉のref.565のアイコン的なケースデザインを踏襲したもの。ベゼルとラグがシームレスに一体化したシルエットは上品かつ質実剛健な力強さを感じさせる一級品の仕上がりです。 スクリューバック式のSS製ケースに搭載するムーブメントは、〈A・シルト〉社のCAL.1158がベースとなる17石のセンターセコンド式手巻きモデルで、オクトの自社キャリバーとしてCAL.1209の番号が付与されています。耐震装置を備えるほか、ケース内部に内蓋を装備しており、フルSS製の防水ケースとも相まって堅牢設計が目立つ仕様。 着用するベルトはアノニムのダークブラウン。イタリア・トスカーナで1970年代からフルベジタブルタンニン鞣しに特化するタンナー、コンチェリア800(オットチェント)社が手掛けるバケッタレザーを使用しています。シュリンク工程で生まれる自然なシボが格調高く、また重厚なエイジングが楽しめる一品。
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