ジラール・ペルゴーの姉妹ブランド〈ミモ〉が、1940年代に手掛けたこちらの腕時計。アール・デコの様式美の影響を色濃く残す、樽型のケースにラウンド型のダイヤルを合わせたバイセロイケースと黒文字盤というレアな組み合わせの一本。ケースバックに記載される文字はスウェーデン語が併記されており、おそらく北欧市場向けに製造されたものと思われます。 こちらのバイセロイケースは、ロレックスのバブルバックなどで非常に有名。ジャンルとして角形に位置しつつもラウンド形の文字盤を持つため、両者のちょうど合いの子的なデザインで、純粋な角形では難しかったスクリューバック式の防水構造も比較的作りやすく、ドレッシーなルックスにタフな堅牢性を兼ね備えたユーティリティモデルとなっています。しかし実際には1930年代から40年代前半の短い期間にしか作られておらず、また当時のオールステンレス製の防水ケースは希少品です。ちなみに裏蓋のオープナーノッチは4つという珍しい仕様。 文字盤はブラック×ホワイトのツートーンカラーに、レイルウェイトラックと折り重なるように配されるホワイトの円周が、アール・デコ特有の幾何学的な図像を描く重厚な仕上がり。夜光塗料をルーレットスタイルのアラビア数字とペンシルハンドに配したミリタリーダイヤルながら、ホワイトの配色をふんだんに用いることで上品な印象すら感じさせる個性的な表情を見せています。 着用するベルトはアノニムのダークブラウン。イタリア・トスカーナで1970年代からフルベジタブルタンニン鞣しに特化するタンナー、コンチェリア800(オットチェント)社が手掛けるバケッタレザーを使用しています。シュリンク工程で生まれる自然なシボが格調高く、また重厚なエイジングが楽しめる一品(近日販売予定)。