スイスに古くから存在した時計メーカー、〈ディミエ・カンパニー(Dimier & Cie.)〉が自社ブランドして名乗っていた〈ディムラ〉の珍しい腕時計がこちら。 文字盤デザインは極めてグラフィカル。見る角度を変えるごとに、さまざまな部分のトーンが目まぐるしく変化し、実に興味深い体験をすることができる唯一無二のデザインです。何が起こっているかというと、まず第一にアラビア数字インデックスのエリア、そして第二にその他のエリア、第三に12、3、9のアラビア数字インデックスとレイルウェイ上の5分毎のマスが、それぞれ異なる3種類のトーンに仕上げてあるため、スリートーンと呼んでいます。特に一つ目と三つ目が同じに見えますが、実は三つ目の方がより濃く見えるように仕上げているのがこの文字盤の芸の細かいところ。 ユニークダイヤルというべき文字盤デザインではあるものの、アール・デコのデザイン性に極めて忠実なセクターダイヤルの傾向を押さえているもので、なおかつ2トーン、3トーンという文字盤のトーンの切り替えも単なる装飾ではなく視認性という機能に資するデザインといえます。 ケースは昨今急激にその認知度を上げている〈フランソワ・ボーゲル〉製で、二重蓋構造のスクリューバック式防水ケース。同社が手掛けるケースでは極めて希少なステップベゼルを採用し、小振りながら格別の存在感を放っています。 搭載するムーブメントは、質実剛健なマニュファクチュールとして知られる〈レヴュー〉社のCAL.57。自社で腕時計も製造していたレビューですが、当時自社以外にこうしたジュエラーなどのリテイラー向けに腕時計を別注製造することもしばしばありました。こちらは地板とブリッジがすべて琉金仕上げというクラシカルで手の込んだ仕上げが施された逸品。