知る人ぞ知るスイスの時計メーカー、〈ウエスト・エンド・ウォッチカンパニー〉。その代表機"SOWAR(ソワール)”は、ヒンディー語で「戦士・騎馬兵」を意味しています。これは当時大英帝国統治下のインドにおける陸軍(Indian Army)から政務官まで、広く公務員に支給された腕時計。現地の高温多湿・塵埃の多いタフな環境を考慮したタフな設計が特徴です。 こちらはウエストエンドでは比較的珍しい黒文字盤モデル。しかも光沢のある漆黒に輝くブラックミラーダイヤルは、シルバーの下地をインデックスやロゴ部分をマスキングした上で仕上げられた、いわゆる「下地出し」という上質な仕上がり。その上で夜光塗料で配された大振りなアラビア数字と、外周部のレイルウェイ・インデックスと融合したバーインデックスによって形成されるセクターダイヤルがアール・デコならではの幾何学的図像を描いています。当時の傑作デザインとして魅力的であると同時に、極めて希少な存在。 小太りで独特のフォルムのケースは、ウエスト・エンド社が常に採用していた高品質ケースメーカー〈フランソワ・ボーゲル(François Borgel)〉のスクリューバックケース。ステンレススチールのケース内部には軟鉄製のインナーキャップを備えているため、より防塵性・耐磁性の高い構造となっています。裏蓋の縁に小さくブロードアローの刻印が見られるのは、ソワールの特徴のひとつ。 搭載するムーブメントは、三番車と四番車の受けをそれぞれ独立させたレイアウトが特徴の自社製機。コストのかかる構造ではありますが、これにより強度とメンテナンス性を高める効果が期待出来ます。クラシックな粒金仕上げの美しい一機です。 着用するベルトは〈アノニム〉のダークブラウン。イタリア・トスカーナで1970年代からフルベジタブルタンニン鞣しに特化するタンナー、〈コンチェリア800(オットチェント)〉社が手掛けるバケッタレザーを使用しています。シュリンク工程で生まれる自然なシボが格調高く、また重厚なエイジングが楽しめる一品(近日販売予定)。