1940年代にドイツのウォッチメーカー〈トリトーナ〉が手掛けたこちらの腕時計。"WASSERDICHT”とドイツ語で防水性を意味する表記がされた、ドイツ市場のみに向けて製造されたレアモデルです。 トリトーナはほとんど認知されていませんが、当時ドイツ陸軍へ腕時計を供給しており、こちらのようなやや小ぶりなモデルも散見される珍しいメーカー。とりわけこの個体は重厚なステップべゼルに加え、「トレタケ」と呼ばれる3点のオープナーインセットが配された裏蓋が特徴です。これらのディテールはロンジンに代表される非常に高い人気を誇るデザインで、近年極端な高騰を続けているのは周知の通り。またドイツ軍のミリタリーウォッチの多くはクロームメッキケースが多い中、フルSSケースというハイエンドな仕様も魅力です。 文字盤デザインもまた秀逸。ミラーフィニッシュのブラックダイヤルに、ゴールドで描かれたレイルウェイインデックスをはじめとする幾何学的な演習の連続に加え、アラビア全数字インデックスは12、3、9のメジャーアワーのみルミナスで描かれた、アール・デコ期のセクターダイヤルの影響を受けたミリタリーダイヤルと言えます。ルミナスインデックスの力強さとノンルミナスの上品さを併せ持ったレアデザイン。 着用するベルトは〈アノニム(anonym)〉のダークブラウン。イタリア・トスカーナで1970年代からフルベジタブルタンニン鞣しに特化するタンナー、〈コンチェリア800(オットチェント)〉社が手掛けるバケッタレザーを使用しています。シュリンク工程で生まれる自然なシボが格調高く、また重厚なエイジングが楽しめる一品(近日販売予定)。