〈シーマ〉が手掛けた1940年代のこちらの角形腕時計。いわゆる一般的なレクタンギュラーモデルと比べ、やや肉厚で無骨なケースデザインが魅力的ですが、それは単なる見た目だけのものではありません。 ”WATERSPORT"のペットネームが付けられていることからわかるように、この腕時計は防水ケースを採用しています。レクタンギュラーケースは、そのケースのフォルム上スクリューバック式の防水構造はとれません。そのためこの腕時計に採用されたのが、ビス留め式の防水構造でした。つまりフロントベゼルとバックケースが入れ子となり、鍔付きの風防をゴムパッキンで挟み込むことで防水性を確保し裏側から4カ所をビスで締めるという複雑な設計となっています。 これは「クラムシェルケース」と呼ばれ、ウォッチケース専業メーカー〈シュミッツ・フレール(Schmitz Freres)〉社が1936年に特許を取得したアイディアです。雄雌のジョイント巻真が使用されているのも大きな特徴。 文字盤はギルトフィニッシュの大振りなアラビア全数字インデックスとその外側に太いラインを配置した大胆なデザインが目を惹く一方で、繊細なレイルウェイデザインを設けた長方形のスモールセコンドに向けて折り重なるように描かれたレクタングルのライン配置の効果により、密度が高く凝縮感のある1940年代初頭に成熟した腕時計のアール・デコ・デザインを体現するような仕上がりです。 ムーブメントはシーマの角形モデルの名機、Ref.364を搭載。滑らかに面取りされたエッジやストライプフィニッシュ、そして美しい曲線を描くブリッジラインは芸術的の一言。その高い信頼性を保証するのが、ブリッジに刻まれたシーマ独自の忠犬ロゴということになります。 着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。イタリア・トスカーナ地方の名革ブッテーロに型押しを施した「ドラーロ」を使用しています。深い経年変化も楽しめるほか、その堅牢性に反して腕に馴染みやすい柔軟性があり、着用感の良さも魅力。 » ”anonym” LEATHER BELT "anonym" (DOLLARO / BROWN)