英国屈指の老舗時計ブランド〈J.W.ベンソン〉。かつて時計師としてロンドンに工房を持っていたウォッチメーカーであったJ.W.ベンソンですが、第二次大戦中の爆撃で工場を破壊され、戦後は様々なウォッチメーカーに腕時計の製造を委託することでブランドを継続していました。 とはいえそのバリエーションは多彩の一言。複数のウォッチメーカーが絡んでいたことから、文字盤はもとよりムーブメントやケースに至るまで、様々なデザインや機構の腕時計が存在しますが、こちらはスイスの名門〈シーマ〉が手掛けたモデルです。 レクタングルをベースとしつつ、よく見るといくつもの平面で構成された多面体のケースは、特に作業工程の多い手の込んだデザイン。知る人ぞ知るウォッチケース製造の名門〈デニソン・ウォッチケース・カンパニー〉のなかでも一際珍しい、銀無垢の角形ケースです。ロレックスやオメガの英国市場モデルをはじめ、スミスの英国製時計の多くに採用されたことで知られる「デニソンケース」ですが、このトノーシェイプケースは極めてユニークな存在。 アラビア数字や、レイルウェイインデックスを含む数々の異なる線の配置が折り重なる文字盤のデザインは、アール・デコが腕時計デザインに浸透した結果生み出されたもので、力強くも上品な仕上がりが特徴。加えて美しいブルースチールの針は懐中時計を思わせるスペード型がセットされ、極めてクラシカルな存在感を放っています。 ムーブメントはシーマ社のCAL.162を搭載。質実剛健で合理的な美しいレイアウトが特徴的で、パーツひとつひとつ抜かりなく磨かれた、まさに質実剛健を体現する仕上がりです。