〈ウォルサム〉が英国市場向けに製造した1920年代の腕時計です。ベルトも当時の販売時のものがそのまま付属する、非常に貴重な一本。 ウォルサムと言えば米国最古の時計メーカーとして知られるアメリカンウォッチブランドの雄。しかしこちらは英国の銀製品に押されるホールマークを持つ英国製ケースを纏った、当時の英国市場向けの個体です。米国製のムーブメントを搭載しているため、その文字盤には誇らしげな"U.S.A."の文字が入っています。 1910年代に戦場で使用されたトレンチウォッチの影響を最も受けた腕時計は、このようなクッションケースを採用する傾向が強く、この時代においてはメンズウォッチの定番的スタイルでした。文字盤は懐中時計のスタイルをそのまま腕時計に求めたもので、レイルウェイ・インデックスをミニッツトラックとスモールセコンドに採用したアール・デコスタイル、ブルースチールのスペード針というクラシックなデザイン。ちなみに当時12を赤で描くことがしばしばあり、その理由は通常リューズ位置に12時が来る懐中時計に慣れた人が間違えないように、という説が有力です。 搭載するムーブメントは米国製。キャリバーナンバーではなく"SAPPHIRE"のキャリバーネームを冠しています。これは懐中時計時代のウォルサムのハイグレードモデルにのみ行われており、他に川端康成が好んだという"LIVERSIDE"などが有名。ブルースチール製のブレゲヒゲゼンマイ、さらにバイメタル切りテンプといった高級仕様が見られるほか、硬いニッケル製ブリッジの全面に配されたダマスク文様と呼ばれる優雅なエングレーヴィングにも当時の米国製ムーブメントの特徴が現れています。 レザーベルトは販売当時のものが付属していますが、念のため当店オリジナルの〈アノニム〉からラグ幅16mmのモデルを無料で差し上げます。 » "anonym" LEATHER BELT