ヴィンテージウォッチ市場で高い人気を誇る隠れた名門〈アルピナ〉。その人気の秘密は優れたデザイン性と卓越したクラフツマンシップに裏打ちされる確かな時計作り。それらを体現する逸品が届きました。販売当時のレザーベルト、タグを伴い未使用状態を保ったニューオールドストックです。 当時としてはやや大きめな部類に入るレクタンギュラーのボディは、シンプルながらカッティングを多く入れた多面体のフォルムを採用。ノンポリッシュでエッジがしっかりと切り立っており、くっきりとした陰影が生まれることで醸し出される力強い存在感が唯一無二です。 文字盤はアラビア数字と時分針に夜光塗料が盛られる、ミリタリーテイスト。レイルウェイ・インデックスとともに線の配置が折り重なるアール・デコ様式を持ち、力強いケースデザインと呼応する重厚な仕上がり。アルピナの個性的な三角形と円が融合したロゴのみを冠した、どこかアノニマスなシンプリシティも魅力を際立てます。 特筆すべきは、レイルウェイ部分と中央部、そしてそれ以外をそれぞれ異なるテクスチャーで仕上げているため、光の差し込み加減によって刻々とツートーンが移り変わり、その角度によっては濃淡が逆転する様は見事。この仕組みも、アール・デコ特有の重厚感を感じさせる演出のひとつです。 ムーブメントは、UROFA社のドイツ製エボーシュがベースとなるレクタンギュラーモデル。UROFA(Uhren-Rohwerke-Fabrik Glashütte AG)はドイツ・グラスヒュッテで1927年に設立されたエボーシュメーカーで、ドイツ空軍のフリーガークロノグラフ〈チュチマ(TUTIMA)〉をはじめとする名品を輩出した実力派。アルピナがドイツ市場向けモデルには、こうしたドイツのエボーシュを使用するモデルも散見されます。