やや小振りながら愛嬌のある小太りのラウンドケース。多面カッティングが施されたユニークなシルエットのラグを持つ防水ケースは、どこかフランソワ・ボーゲル(François Borgel)社を思わせる質実剛健な風合いを持つ〈レオニダス〉が手掛けたこちらの一本。 レオニダスと言えば、後にホイヤーと合併する隠れた名門で、クロノグラフの豊富なラインナップで知られますが、今回の個体はむしろ珍しい三針モデル。堅牢なボディに身を包んだタフな腕時計ですが、裏蓋の刻印”C.S.(I)”は”Civil Service in India”を意味しており、「インド高等文官」と呼ばれる高級官僚が身に付けていた貴重な個体であるということがわかります。 長い年月を経て非常に魅力的な風合いを帯びた文字盤は、ややマーブルがかった味わい深い仕上がり。同じく味わい深く色付いた夜光塗料の雰囲気も、美しいブルースチールの針と相まってむしろ高級感を高めています。三方にアラビア数字、そしてドットインデックスが間に配されるコンビネーションも、やや大振りなドットが可愛らしく、それでいてかつ力強い表情すら浮かべています。 ムーブメントは"M.W.Co"というムーブメントを手掛けたと思われるメーカー名の刻印を持つ手巻きモデルを搭載。この刻印の会社が具体的にどの会社名を指すのか定かでありませんが、英印軍の腕時計の代表機種であるウエストエンド・ウォッチカンパニーのそれと近く、分厚く抜かれた質実剛健なブリッジレイアウト、そして琉金メッキの高度な仕上げなど、作り込みの良さが伺えます。耐震装置インカブロックを装備している点も見逃せません。 着装したブレスレットは、ほぼ同時代のオールSS製バンブーブレスレット。ミントコンディションをキープしており、ミリタリーウォッチならではの無骨さとジュエラー由来の上品さをカバーした絶妙なマッチングを見せています。