製造当時のコンディションそのまま、未使用の状態で発見されたこちらの腕時計。ドイツ製のムーブメントとドイツ語のスペック表記が裏蓋に見られることから、おそらくドイツのウォッチブランドによって製造されたものと思われますが、何より目を引くのがブランド名やロゴなどが一切描かれていないという点。 やや逆説的な表現ではありますが、ブランド名がないことがむしろミステリアスで魅力的に映えるという極めてモードな存在感。それはこの秀逸な文字盤デザインが果たす役割が非常に大きいと言えます。ローマ数字を四方に配置し、セクタースタイルのインデックスがそれらを取り囲むという、圧倒的なアール・デコスタイル。そしてブルースチールの針類も含め、全ての要素が直線で構成されているのがミソ。 無名でありながら、ここまで優れた文字盤デザインを持つ腕時計は滅多にお目にかかれません。柿色のカッパーダイヤルも、一層格調高くドレッシーな色を出しています。またレクタングルシェイプのケースもオールSS製で、未使用。当然ノンポリッシュです。4本のラグがそれぞれベゼルを掴むような力強さを持って配されています。 搭載するムーブメントは、"PUW"という数少ないドイツのエボーシュメーカーが手掛けたCAL.500を搭載。PUWとはは”Pforzheimer Uhren-Werke”つまり「プフォルツハイム時計工場」を意味しています。プフォルツハイムはドイツ南西部にあるシュヴァルツヴァルト(黒い森)と呼ばれる地域にあり、数多くのドイツメーカーを輩出した地域として知られています。角形ムーブメントならではの独特な輪列配置やブリッジのレイアウトにも、ドイツ時計マイスターの質実剛健なクラフツマンシップが光ります。 着装したブレスレットは同時代のバンブーチェーンブレスで、こちらも未使用品のニューオールドストック。小振りながら圧倒的なコンディションの良さを見せるこの腕時計がより引き立つ、ベストマッチのブレスレットです。