アメリカンウォッチの雄、〈ウォルサム〉が1940年代に手掛けたこちらの腕時計。製造当時のピッグスキンベルトにディスプレイケース、さらには当時のプライスポップまで揃った未使用状態のままという、資料的価値の高いニューオールドストックです。 米国の鉄道時計を思わせる大きくはっきりと描かれた印象的なアラビア数字インデックスに加え、力強く太いリーフ針という出立は、ヨーロッパ、特に英国で見られる控えめなルックスの腕時計とは対照的。そして純白のホワイトダイヤルが、それらの存在感を前面に際立たせています。 アメリカン・デコが爛熟した1940年代、アメリカンウォッチの主流は「角金」と呼ばれるゴールドフィルドのレクタンギュラーケースでしたが、こちらは当時は少数派となるラウンドケースを採用。裏蓋まで総14金ゴールドフィルドで仕上げられたハイエンドな仕上がりです。 注目したいのが、裏蓋に記されたケース製造元である〈キーストン〉社と”J.BOSS”の刻印。後者は「金張り(GOLD FILLED)」の製造方法を開発し1859年にその特許を取得したジェームズ・ボスの名前で、彼の特許を買い取ったHagstoz & Thorpe社がキーストン社の母体となった経緯から、彼に敬意を表して同社製のウォッチケースには必ず"J.BOSS"の刻印があります。 ムーブメントは、CAL.6/0-Bというウォルサムが自社で製造した米国製の手巻きモデルを搭載。非常に美しい曲線を描くブリッジは丁寧な面取りがそのまま残り、おそらくまだ一度もオーバーホールすらされていないアンタッチコンディションという信じられない逸品です。