1880年に、ロンドンのリージェント・ストリートで創業した老舗ジュエラー〈ゴールドスミス&シルバースミス〉が1930年代に手掛けた腕時計。英国では特にジュエラーズウォッチとかショップウォッチなどと呼ばれ人気を博しているジャンルです。 金銀製品やダイヤモンドをはじめとした各種宝石類、アクセサリー関連アイテムを販売していたジュエラーが、自社名を冠した腕時計を作ることは当時ポピュラーで、その多くは妥協のない時計作りのコンセプトが貫かれた良品が揃います。 こちらもその例に漏れず、オールSS製の硬質感あふれるボディに、時代性を感じさせる荘厳な文字盤デザインを持った魅力的な一本。 この腕時計が作られた1930年代といえば、アール・デコが腕時計デザインにおいて爛熟を極めた時代。特にその幾何学的特徴で当時盛んに用いられていたレイルウェイ・スタイルのインデックスやセクターデザインのスモールセコンド、さらにカリグラフィーを思わせるエンシェント・スタイルのアラビア数字インデックスや、18世紀には既に存在していたと言われるブレゲ・スタイルのブルースチール針など、古典的なデザインの粋を集めた標本のような個体です。ケースのラウンドラインを崩さないよう、ケースサイドにくぼみを持たせてリューズを収納したヒドゥン・クラウンを採用している点も見逃せません。 搭載するムーブメントは、質実剛健なマニュファクチュールとして知られる〈レヴュー〉社のCAL.57。自社で腕時計も製造していたレビューですが、当時自社以外にこうしたジュエラーなどのリテイラー向けに腕時計を別注製造することもしばしばありました。レヴュー特有の美しいブリッジラインやストライプフィニッシュを持つ手の込んだ機械で、バイメタル式のスリット入りテンプという古い腕時計ならではのディテールも見られます。 着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。手揉み加工を施したイタリアンシュリンクレザーを素材に使用しています。オイルをたっぷりと含んでいるためしなやかでしっとりとした質感があり、使い込むうちに味わいのある風合いとなります。 » "anonym" LEATHER BELT (ITALIAN SHRINK / GRAY)