19世紀から英国市場におけるIWCの代理店を務めていた宝石商、〈シュタウファー〉社が1930年代に製造した腕時計。文字盤にブランド名を記載しないアノニマスな表情がミステリアスな魅力を放つ一本ですが、実はこうした無記名の文字盤は当時のジュエラーズウォッチの一般的なスタイルでもありました。 文字盤は夜の湖面を思わせる、ギルト仕上げの漆黒のブラックミラーダイヤル。底の見えない深い黒の美しさもさることながら、その上に脚光を浴びて引き立つ夜光塗料やホワイトの重層的な線の配置が、まるで湖面に浮かぶかのように映る様は見事の一言です。 そのデザインはアール・デコが腕時計において爛熟する1930年代にアイコニックなセクターダイヤル。レイルウェイ・ミニッツトラックから太いバーインデックスが伸びる重厚感と力強さが持ち味です。細かく見ていくと、アラビア数字だけでなく奇数部分のバーインデックスにも夜光が盛られているのが面白い。 美しいトノーシェイプのSSケースは、1910年代の面影を持つワイヤーラグを採用したトレンチスタイル。ジュエラーならではの上品なルックスにミリタリーテイストを少し加えるあたり、100年近く前の腕時計に極めて非凡なバランス感覚を感じます。 搭載するムーブメントは、フォンテンメロンのエボーシュをベースにエテルナのCAL.520を思わせる重厚かつ透け感のあるスリットが印象的なブリッジレイアウトを採用した手巻きモデル。ブリッジに見られる"PEERCEE"は、シュタウファー社が手掛けた自社ムーブメントのひとつで、同社がIWCとの代理店関係が終わりを迎える1920年代から1930年代にかけて採用されていた機種です。 着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。イタリア・トスカーナ地方の名革《ブッテーロ》を使用しています。深い経年変化も楽しめるほか、腕に馴染みやすくその着用感の良さも魅力的です。 » "anonym" OPEN-END LEATHER BELT (BUTTERO / BROWN)