1940年代に〈トリトーナ〉というウォッチメーカーが手掛けたこちらの腕時計。ほとんど使用感の見られないミントコンディションを維持し、まるで1940年代からタイムスリップしてきたかのような迫力を感じさせる一本です。"WASSERDICHT”とドイツ語で防水性を意味する表記がされているほか、耐震装置を装備したタフな仕上がり。 トリトーナはほとんど認知されていませんが、当時ドイツ陸軍へ腕時計を供給しており、通常のラウンド型とともにこのようなトノウ型のモデルもごく少量供給していた珍しいメーカー。個人的にはこちらの方が時計としての価値は明らかに上。文字盤デザインにはいくつかのバリエーションがあり、こちらは軍用の懐中時計に範をとったビッグレターのアラビア全数字インデックスとペンシルハンドがインパクト大。それぞれ盛られた夜光塗料の風合いもたまりません。腕時計に見られるアール・デコの典型、レイルウェイ状のミニッツトラックやスモールセコンドのデザインも重厚感を際立たせています。 第二次大戦中、つまりナチス時代のドイツ陸軍に支給された腕時計は、同時代の英国陸軍のダーティーダースと同じく様々なウォッチメーカーが参入し、ある程度共通したスペックとデザインで納入されていました。裏蓋のシリアルナンバーに”DH”もしくは”D”と入るのが特徴ですが、しかしそうした正規の納入経路以外にも、市販の腕時計でも陸軍での制式時計と同様のスペックを持っていれば軍が買い上げて兵士に支給することもあり、特に物資が不足していたドイツや英国ではしばしばそうした例が見られます。これはまさにそうした過程でドイツ軍に渡った個体と思われます。 それはユニークなケースデザインのみならず、角形のジャンルとなるトノウシェイプでは数少ないフルSS製となる頑強かつ堅牢な防水ケースである点がまず挙げられます。そこで注目に値するのは裏蓋の三つのインセット。「トレタケ」と呼ばれ近年急激に高騰しているロンジンのステップケースモデルと同じ、オープナーの爪を当てる部分が3つしかないユニークな仕様で、その多くはフルSS製で高級モデルにのみ採用されていることから、ロンジン以外でも非常に高い人気を誇るディテールです。 着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。イタリア・トスカーナ地方の名革《ブッテーロ》を使用しています。深い経年変化も楽しめるほか、腕に馴染みやすくその着用感の良さも魅力的です。 » "anonym" OPEN-END LEATHER BELT (BUTTERO / BROWN)