アルピナのドイツ工場を母体とするウォッチメーカー〈ドゥゲナ〉。同社が1970年代に手掛けたのがこちらのダイバーズウォッチです。販売当時のラバーベルト、タグが付属するニューオールドストック(NOS)という貴重な一本です。 クォーツショックがヨーロッパの時計製造を襲い、各社迷走を続けた1970年代。日本製の安価な時計に対抗し、外装やムーブメントのコストダウンが極限化しチープな作りの機械式時計であふれかえった当時を鑑みると、この腕時計は異例なほど多大なコストが掛けられた個体と言えます。 当時、特にドイツ市場においてはメッキが当たり前だったケース素材。こちらはオールSS製に加えリューズガードを備え、メーカーの極めて強いこだわりが伺える仕上がり。38mmのケースサイズもヴィンテージウォッチには希少なラージサイズで、回転ベゼルや頑強なスクリューバックケースとも相まってかなりの存在感を放っています。 文字盤もモータースポーツ全盛期ならではの疾走感のある派手なデザインながら、あえてアラビア数字を用いてクラシックな要素を残した絶妙なバランス感覚が見事。クールだけどちょっとダサい、ちょっとダサいけどクール。この腕時計は、そういう命がけの綱渡りの上に成り立った紛れもなく名品と呼べる一本です。 ムーブメントはドイツ製の手巻きモデルを搭載。表面をハニカム模様にパンチングしたユニークな仕上げが特徴的。耐震装置もドイツ製ムーブメントにしばしば見られるアンチショックが採用されています。