当店ではまず入れることのない〈ロレックス〉の腕時計。しかしこのロレックスは、どうしても入れたかった特別な一本。 「普通の」ロレックスは基本的にスルーしますが、今回こちらを仕入れたのには理由があります。そのひとつが、当時英国市場向けに企画された英国仕様という点。英国の高品質ケースメーカーとして知る人ぞ知る〈デニソン(Dennison Watchcase Co.)〉社が手掛けた、9金無垢のケースを採用しています。いわゆるノンオイスターモデルのロレックスは、オイスターケースにはないシックでドレッシーな存在感が魅力ですが、デニソンケース特有の流麗にして力強いフォルムは唯一無二。 もうひとつの理由は、その端正な英国顔。一見すると教科書通りともなりかねない要素で、ここまでバランス・気品ともに最上級の表情に仕上がった文字盤デザインは他では見られません。生真面目なフォントが特徴的なアラビア全数字インデックスは、同じ英国の腕時計ブランド〈スミス〉を彷彿とさせるソリッドなルックス。さりげないエンボスのゴールド仕上げで高級感を演出しています。優美なリーフ形の時分針もまた英国で特に親しまれている上品なディテールです。 搭載するCAL.10-1/2Hというキャリバーは、言わずと知れたバブルバックのベースムーブメント。アンティーク・ロレックスの礎を築いた傑作機です。〈スーパーバランス〉と名付けられた独特の形状のテンプはロレックスが1936年に特許を取得した構造で、テンワを部分的に幅を持たせて直径を長くすることで慣性モーメントを高め、高い精度と安定性を実現しました。ブレゲ巻上げヒゲゼンマイと合わせても、大変なコストがかけられたハイスペック機と言えます。 装着したベルトは〈カシス〉によるホーウィン社のクロムエクセルレザーを使用したもの。肉厚なマットブラックのボディにブラックステッチというモードなスタイルで、腕時計の高級感を引き立たせます。