〈ワインガルテンス〉は、当時英国・ロンドンに存在した高級宝飾品店。E.C.2はロンドン市内の郵便番号で、ちょうどシティを含む金融街です。今はすでにその歴史に幕を閉じた知られざるジュエラーですが、その時計のラインナップは素晴らしく、金無垢ケースを使用した腕時計や懐中時計など、ガラードやJ.W.ベンソンと並ぶ高品質かつ上品なアイテムが揃います。 こちらは中でも一際異彩を放つ、ティアドロップ形のラグデザインを備えた9金無垢のラウンドケースを纏った一本。しかも英国のウォッチケースメーカー〈デニソン〉社が手掛けているのに驚かされます。同社はロレックスやオメガといったビッグメゾンにもウォッチケースを供給していたことでも知られていますが、こうしたユニークデザインのケースを作ることは極めてまれ。それだけに、このワインガルテンスが当時持っていたプレゼンスの重要性を物語っているようにも思えます。 ドレッシーなケースに対して、文字盤デザインは夜光塗料をふんだんに用いたミリタリーテイスト溢れる仕上がりです。アラビア全数字インデックスもやや大振り。ロザンジュと呼ばれる菱形の時分針にも夜光塗料が盛られている一方で、ブルースチールの針フレームが光に反射して青く輝くのは、どこか官能的な美しさを感じさせます。そして何気なく文字盤外周部のミニッツインデックス部分のテクスチャーを内側と異なる仕上げを施しており、光の差し込み方で内と外がツートーンダイヤルのように見せている点も見逃せません。 ムーブメントはETAのCAL.900をベースに姿勢差の調整がされたハイエンドモデルを搭載。投げ込み式のケース構造のため、通常のスナップバックケースよりも幾分防塵性に優れているほか、リューズはスプリング式のダストプルーフを内蔵し、こちらもやはり防塵性を確保しています。 着用するベルトは天然のヌメ革を採用した当店オリジナル。しなやかでナチュラルなヌメ革の魅力を生かし、使い込むことで色合いを深めるエイジングが楽しめます。