1940年代、〈ロンジン〉の腕時計です。オールSSのラウンドケースですが、180度の可動域を持つフレキシブルラグを持つほか、防水構造を持つボディ部分もまたユニークかつ手の込んだ作りが見られる一本。 特に注目に値するのはロレックスの初期のオイスターケースと同じ防水構造が採用されている点。コインエッジが特徴的な裏蓋だけでなくベゼルもねじ込み式となっており、ムーブメントに取付けられたネジ付き中胴をミドルケース内部で挟み込むという、非常に手の込んだ内部構造を持っています。 このケースを手掛けたのは、当時英国に存在した〈E.B.E.〉というケース専業のメーカー。英国市場でしか流通していなかったこと以外謎に包まれた存在ですが、このE.B.E.社製のフレキシブルラグ×前後ねじ込み式の防水ケースは、ロンジン以外、とりわけ英国のジュエラーズウォッチにも例を見ることができます。ただしこの個体の場合は31mmのラージモデルで、通常は28mmと小振りのサイズ。ただでさえ希少なモデルのさらに少数派という、幻の逸品です。裏蓋に “REMOVE MOVEMENT FROM FRONT AND UNSCREW BEZEL” と、特殊な構造ゆえの注意書きも。 文字盤デザインは、英国市場向けということもあり、クラシカルにしてあくまで控えめ。アラビア数字もバーインデックスを用いたセクターダイヤルも、奥ゆかしい表情に徹しているのに好感が持てます。 搭載するムーブメントは、CAL.12.68Z。伝統的な粒金仕上げの機体は分厚く抜かれた耐久性の高いパーツで構成され、長期の使用に耐える高い基礎体力を持ったロンジンきっての傑作機です。 着用するベルトは、自然な細かいシボが印象的なイタリアンシュリンクレザーを採用したadvintageオリジナル。オイルをたっぷりと含んでおり、しなやかでしっとりとした質感があります。使い込むうちに光沢が増し、味わいのある風合いとなります。