スミスが製造した視覚障害者向けの腕時計がこちら。通称「ブラインドマン」、もしくは点字法の開発者の名をとって「ブライユ」とも呼ばれる珍品です。 ケース6時位置のボタンを押すと風防側が縦に開き、直接文字盤の突起や針を触って時刻を確認するという仕組み。文字盤は直に指で触ることを考慮し、汚れたり劣化しないポーセリンダイヤルを採用しています。ただ、その特異な使用方法からコンディションに難のある個体が多い中、ケース・文字盤ともにここまでダメージの少ないものはなかなか市場では出てきません。 頻繁に指で触れてもズレたり外れたりしないよう、時分針の軸周りは一般的な腕時計よりも固めに締められていますが、この部分も緩みやダメージはありません。割れたり欠損する個体が多い突起部分も、奇跡的に無事。 しかしながら、整然と並べられた突起や特異なシェイプの時分針は、単に用途以上のデザイン性を感じるのは私だけではないはず。また、この時計固有の意匠や構造だけにとどまらず、アラビア全数字やレイルウェイインデックスといったクラシックな意匠も絶妙な位置に配置され、腕時計として破綻のない端整なルックスに仕上がっているのが素晴らしい点です。 ムーブメントはいわゆる”1215(トゥエルブフィフティーン)”の英国製自社ムーブを搭載。流線形のレイアウトや粒金仕上げなど、質実剛健な中に美しいシルエットを宿すスミスの傑作機で、スペックにおいても高水準を与えられています。 着用するベルトは天然のヌメ革を採用した当店オリジナル。しなやかでナチュラルなヌメ革の魅力を生かし、使い込むことで色合いを深めるエイジングが楽しめます。