立体的なドレープを持つ凝ったラグデザイン、ラウンドケースはやや大ぶりにして、このユニークなラグデザインに負けない力強いフォルムをスリーピースで表現。上質感あふれるブルースチールのリーフ針は、その根元から中腹、そして切っ先へとボリュームの差を激しくとり、メリハリの効いた美しい曲線を描いています。スモールセコンドの秒針もデザイン性を重視し、アルファハンドと呼ばれる短剣のようなクラシカルなフォルムを採用。 これだけ書くと、こだわりようが半端でない、どこの名門が手掛けたのかと思わせる腕時計ですが、その名も〈ディプサ〉。ほとんど謎に包まれたブランドで、1900年代初頭からフランス市場を中心に腕時計の製造販売を行なっていた数あるエタブリスールのうちのひとつです。ブランドとしてはほとんど無名にもかかわらず、その随所に見られるクラシックとアール・デコが融合するデザイン性は秀逸の一言。 ことに文字盤デザインについては、ホワイトダイヤルに描かれたカッパーピンクのインデックスのハイセンスな色合いが印象的で、楔形インデックスという抽象的なモチーフの並列の中に、アクセント的にローマ数字をメジャーアワーとして四方に配置。ハンサムです。 搭載するムーブメントは実力主義で知られるエボーシュメーカー〈フォンテンメロン〉のCAL.175ベース。ほとんど使用感が見られず、外装を含めたコンディションはデッドストックに近い極めて良い状態をキープしています。 ブランドバリューありきの価値観では損をする。盲目的なブランド主義へのアンチテーゼ。