〈ヴァーテックス〉が手掛けた、上品なクッションシェイプのケースがクラシックな魅力を放つ1950年代の一本。そのフォルムはドレッシーな雰囲気を持ちながら、デザインのルーツは腕時計黎明期における戦場で用いられたトレンチウォッチであり、どことなく漂う力強い表情はその名残かもしれません。 9金無垢のケースは英国のウォッチケースメーカー〈デニソン〉社が手がけた、いわゆる「デニソンケース」が採用されています。独特の柔らかな輝きが醸し出す何とも言えない上質感もさることながら、英国時計ならではのハンサムなルックスを演出する文字盤デザインもまた秀逸。アラビア全数字やレイルウェイ状のミニッツトラックといった典型的なミリタリーウォッチのディテールに、優美な曲線が特徴的なリーフ針という上品な組み合わせが見事な調和を生んでいます。 搭載するムーブメントCAL.59は、ゴールドシャトンを受け石のルビーに備えるほか、優美な曲線を描くブリッジの丁寧な面取りなど、細部に手の込んだ仕事が見られる機械。ヴァーテックスの姉妹会社で、主に自社ムーブメントの製造で知られる〈レヴュー〉によって作られており、いかにも頑強で分厚いパーツが用いられた質実剛健なムーブメントです。創業者ゲデオン・トーメンのイニシャル"G.D(Gédéon Thommen)"の刻印が見られるほか、耐震装置インカブロックを搭載している点もポイント。