裏蓋に"D"の軍制記号が刻印される、第二次大戦中のドイツ陸軍支給のミリタリーウォッチ。当時いくつかのスイス時計メーカーによって製造されていたこのシリーズですが、基本スペックはスクリューバック式のウォータープルーフケース、ブラックミラーダイヤルなど。通常はドイツ語で「陸軍制式時計」を意味する"Dienstuhr Heer"の頭文字"DH"の刻印が入る一方、プロントのドイツ陸軍モデルはいずれも"D"のみが入ります。 プロントというこの聞き慣れないメーカーは、1890年にスイスのル・ノワールモンで創業。シンプルな三針時計や自動巻きモデルからクロノグラフなどの複雑時計まで、幅広い腕時計をリリースしていた老舗です。 一般的にやや小振りなものが多いドイツ陸軍モデルですが、プロントが手掛けたものはやや大振りなのが特徴。漆黒のミラーフィニッシュが施されたブラックダイヤル、ルミナス(夜光塗料)で配されるアラビア数字やペンシルハンド、レイルウェイ・インデックスといった、軍用時計らしい用の美が光る独特の文字盤デザインも魅力的。ケースに使用感や小キズが見受けられますが、軍用機という背景を考慮すると比較的ダメージは少なく良いコンディションをキープしています。 堅牢なスクリューバックケースに搭載するムーブメントは、A・シルト社のCAL.1130をベースに特殊なカスタマイズが施された軍用機。駆動の激しいガンギ車のブリッジを独立させ、ショックレジスト型の耐震装置をテンプに装備したりと、ハードな使用環境を想定したタフな仕様となっています。