質実剛健な時計作りで知られ、現在も時計業界のトップランナーの一翼を担うル・ロックルの名門〈ティソ〉。早くから〈オメガ〉と協業していたことからも、高品質で耐久性の高い自社ムーブメントを搭載した腕時計はどこかオメガの腕時計との共通性を感じます。 こちらの腕時計も例に漏れず、堅牢なオールステンレススチールのスクリューバックケースを纏った力強い存在感を漂わせる一本。何より目を引くのは、茶褐色のマーブル柄に色付いた文字盤。元はグレーもしくはブラックダイヤルと思われますが、このように風合いの美を思わせるエイジングが生まれることは、極めてまれです。このヴィンテージの家具や着古したデニムに近い味わいは、ある種のダメージではありこそすれ、時計の機能に大きな影響を与えるものではありません。 ニードルハンドと呼ばれる注射器針形の時分針、そしてアルファ形のスモールセコンド針はともにホワイトの配色。これは文字盤外周のレイルウェイやサブダイヤルの目盛りともリンクし、本来は黒文字盤に映えて視認性を確保していたものと思われますが、味わい深くエイジングした文字盤を背景にしても変わりません。 ムーブメントはティソが誇る三針の名機、CAL.27。質実剛健にして合理的な構造、パーツの作り込みの良さなど、随所に実力派メゾンらしさの光るムーブメントです。「ショックレジスト」と呼ばれる高品質な耐震装置をテンプに装備するほか、ヒゲゼンマイとテンプに独自の合金を使用することで磁気帯びを防ぐというも、ティソが開発した世界初の耐磁技術「アンティマグネティーク」が用いられています。