マセイ・ティソ。あの有名なティソとは全く関係のない、もうひとつのティソが生み出したこの腕時計。それは愛嬌がありつつも芯の強い、質実剛健という形容詞が最も似合う一本。 そのボディは丸みを帯び、まるで潜水服のヘルメットを思わせるユニークなフォルム。それと好対照なフラットなステップドベゼルが見事なアクセントとなって活きています。ケースに埋め込まれるようにして配された大振りなリューズのデザインもポイント。 文字盤にはくっきりとしたアラビア数字インデックスとブルースチールの針が夜光を伴います。印象的なリーフ形のセンターセコンドの優美な曲線と鋭い直線のコントラストは、この腕時計のハイライトのひとつ。そして意外なデザイン上の特徴は、鉄道線路を意匠化したレイルウェイ・インデックスと、細かい目盛りを刻むミニッツ・インデックスとが、両方とも外周部にセットされている点。 クラシカルで伝統的な意匠である前者と、センターセコンドが生まれた後に考案された新しい意匠の後者。言ってしまえば機能が重複する両者は、クロノグラフのように別々の機能をひとつの文字盤に搭載する時計には見られますが、シンプルな三針時計で本来同居することはありません。センターセコンドの腕時計自体がまだ新しいスタイルであった時代、デザインが不定であっがゆえに生まれた、クラシックと先進性が融合するプリミティブな魅力がそこにあります。 搭載するムーブメントはバンパー式のハーフローターを備えた自動巻きモデル。独特の流線型を持った美しいパーツデザインが印象的。ケース内部は内蓋を備えており、防塵性が高められています。