裏蓋に”DH”の軍制記号が刻印される、第二次大戦中のドイツ陸軍シリーズのひとつ。DHとは”Dienstuhr Heer”の頭文字で、ドイツ語で「陸軍制式時計」を意味しています。当時いくつかのスイス時計メーカーによって同様のミリタリーウォッチがつくられており、基本スペックはスクリューバック式のウォータープルーフケース、ブラックミラーダイヤルなど。 こちらは名門ロンジンによって製造された一本ですが、何よりその最大の特徴は重厚感に溢れるステップドベゼル。ドイツ陸軍モデルのケースはそのほとんどがクロームプレートであるため、メッキの剥離や摩耗が目立つものが多い一方、ロンジンは数少ないステンレススチールを採用している点でも優れています。 そのマットな風合いと武骨な魅力は、ブラックミラーフィニッシュが日に焼けて味わい深く変化したトロピカルダイヤルによって最大限に増幅。ある種グロテスクとも形容できるその風貌は、履き込んだヴィンテージデニムや使い込まれたレザーアイテムのように、むしろ唯一無二の魅力へと昇華した見事な仕上がりを見せています。 堅牢なケースに搭載するムーブメントは、ロンジンきっての名機、CAL.12.68Z。一般的な粒金仕上げとは異なるシルバープレートはドイツ陸軍モデルの特徴。肉厚で頑丈なパーツもさることながら、磨き上げられたバーツの表面やエッジなど、細部まで丁寧な仕上げが見られる魅力的な一機。ショックレジスト型の耐震装置をテンプに装備している点も見逃せません。