古き良き時代のハミルトン。当時はそれぞれのモデルにペットネームが与えられ、ケースの内側にその刻印が見られます。こちらは「カービィ(KIRBY)」と命名された1940年代のモデル。 1920年代にヨーロッパで生まれた「アール・デコ」と「バウハウス」という2つの大きなデザイン潮流が、1930年代に米国で衝突。いわゆるアメリカン・デコと呼ばれる独特の装飾芸術のスタイルが生まれました。そしてこの腕時計と言う依り代においては、直線的で幾何学的なアール・デコのデザインと、ドットやバーインデックスといったバウハウスの合理的・機能的デザインが見事な融合と協調を見せています。 さらにはアラビア数字が3方のみ、しかも最も内側に、スモールセコンドの存在感とうまくバランスをとるかのように配置されるあたり、デザイナーの高い感性を伺わせます。すべてのインデックスは単なるエンボスではなく、ひとつひとつ独立したパーツとして植字されているというこだわりっぷり。優美なドレープを持つレクタングルシェイプは、アメリカン・デコならではのボリューム感を持っています。 搭載するユニークな角形ムーブメントは、ハミルトンが誇る名機CAL.982。増石された19石の受け石にはゴールドシャトンを装備、ブレゲ巻上げヒゲゼンマイ、丁寧なパーツの面取りとブリッジのストライプフィニッシュなど、まさに「全部盛り」と言うべきハイエンドなムーブメントです。