第二次大戦期の《ウエスト・エンド・ウォッチカンパニー》の腕時計。"SOWAR(ソワール)"とはヒンディー語で「戦士・騎馬兵」を意味しています。当時大英帝国統治下のインドにおける陸軍(Indian Army)に支給されたミリタリーウォッチで、現地の高温多湿・塵埃の多いタフな環境を考慮したタフモデル。内蓋に見られる"C.S.(I)”の刻印は”Civil Service in India”を意味しており、「インド高等文官」と呼ばれる高級官僚に与えられた個体と思われます。 こちらはソワール・シリーズの中でも特にミリタリー色の強いモデル。この時代には比較的珍しいセンターセコンド仕様で秒単位の視認性が高められており、傷病者の脈拍計測等に効果を発揮したものと思われます。直線で構成されるユニークなフォントのアラビア全数字インデックス、スペード形時分針はともに夜光塗料が盛られ、経年により味わい深い雰囲気を見せています。当時としては新参であったセンターセコンド仕様で、クロノグラフを思わせるブルースチールの秒針がインパクト大。 小太りで独特のフォルムのケースもウエスト・エンドのチャームポイントで、フランソワ・ボーゲル(François Borgel)社のスクリューバックケースが採用されています。ステンレススチールのケース内部には軟鉄製のインナーキャップを備えているため、より防塵性・耐磁性の高い構造となっています。裏蓋の縁に小さくブロードアローの刻印が見られるのは、ソワールの特徴のひとつ。 搭載するムーブメントは《フォンテンメロン(FHF)》社のエボーシュをベースに、よりメンテナンス性の高いパーツレイアウトを施したウエスト・エンド社の自社ムーブ。出車追加によるインダイレクト・センターセコンドは当時比較的新しい技術です。 付属するバンブーブレスは、当時ウエス・エンド社がレザーベルトと並列で提案していた純正品。ミリタリーアイテムながら上品なテイストが魅力的な逸品。