こちらは《トーマス・ラッセル&サン》という英国の宝飾品店の腕時計。創業者トーマス・ラッセルにより英国リバプールで1848年に設立された由緒あるジュエラーで、ビクトリア女王から王室御用達の勅許状を得たことでも知られています。 乳白色のポーセリンダイヤルに映える、優美なブルースチールのブレゲ時分針。陶板製の文字盤は奇跡的に一切のダメージを逃れており、針も腐食等はありません。実に古典的なアール・デコ様式が息づく文字盤デザインも含め、製造当時の上質感をそのまま湛えています。ケースは英国時計の例に漏れず、英国の高品質ケースメーカーの《デニソン》製。UK国内向けの腕時計らしい特徴を多く備えた、控えめながらも質実剛健な一本。 12のみ青字で表示されているのも特徴的。腕時計の黎明期、軍用時計でこのようなデザインが用いられたことがルーツと言われますが、一般的には赤で彩られることが多い。そのため青字のものはきわめて稀な存在です。 搭載するムーブメントCAL.59は、スイスの時計メーカー《レヴュー》が手掛けたもの。ユニークなブリッジレイアウトともに、粒金仕上げによる質実剛健な様相を見せる美しい機体。レヴューおよびその姉妹メーカーのヴァーテックスは、実力のあるマニュファクチュールで、特に英国のジュエラー向けに腕時計の製造を請け負っていたことで知られています。