オーセンティックという言葉がぴったりくるルックスの一本。暗所でも視認性を落とさない、ルミナスと呼ばれる夜光塗料が配されたアラビア全数字インデックスと、ペンシルタイプの時分針。戦場で用いるミリタリーウォッチを源流とする紳士用腕時計として、そのデザイン性と機能美を踏襲したこの腕時計は、まさに「正統派」と言えます。ベゼルからラグへと流れる美しいシェイプも見逃せません。 ただ1940年代にあって珍しいのが、文字盤中央に秒針を置くセンターセコンドと、自動巻きムーブメント。さらに言えば、スクリューバックとは異なる、2ピース構造のプッシュアウト型防水ケースです。それらは全て、当時にあっては腕時計の最新技術を集めたものでもありました。 スモールセコンドに歯車と秒カナをそれぞれ追加した出車式と呼ばれる構造に加え、バンパー付きハーフローターによる自動巻き機構など、いずれも本中三針や全回転ローターといった、より洗練された発展型が生まれる以前のモデル。旧型ならではの味わいとメカニカルな雰囲気、バンパーの弾む感触といったアナログな魅力が楽しめます。 かのロレックスが求めた「パーペチュアル」とは、完全防水のケースと自動巻き機構を持ち、リューズによる操作を極力抑えた腕時計ですが、この腕時計はその延長線に位置する性格を持っていると言えます。ケースに小キズが見られますが、全体的に非常に良いコンディションを保っています。 ヘルヴェティアは、1848年にルイ=ポールとセザールのブラン兄弟がスイスに設立したジェネラル社(GENERAL WATCH CO.)が有したブランドのひとつ。同社が1904年に完成させ、キャリバー名に「究極」を意味する「オメガ」と名付けられた新型ムーブメントこそ、後にスーパーブランドに成長するオメガの原点であり、実はヘルヴェティアはこの姉妹ブランドに位置付けられます。