1940年代に製造された《インペリアル・ウォッチ・カンパニー》の腕時計「マリタイム」が入荷しています。インペリアル社はスイスの時計メーカーで、主に米国市場向けに腕時計を製造しており、同社の腕時計にはこちらの個体と同様の特徴を持ったものが多く見られます。 やや小振りながら質実剛健な雰囲気が漂う一本。その独特の存在感を生んでいるのは、手の込んだカッティングが配されるケースデザインに加え、フロントベゼルとバックケースを重ね合わせ、裏側から4カ所をビスで留めるという重厚な設計のため。 ペットネームの「マリタイム」が示唆するように、マリンスポーツなどの使用環境を想定した防水構造を持っています。このような裏蓋を持たずバックケースに収められたムーブメントを風防の上からベゼルケースで挟み込む構造は、スクリューバックが一般化する以前に見られる珍しい防水仕様です。雄雌のジョイント巻真とダストプルーフのリューズが使用されているのも大きな特徴。 1940年代としては比較的珍しかったセンターセコンドの文字盤には、外周部に細かい目盛りが刻まれたセコンドインデックスを備え、高い秒視認性を確保。その内側にレイルウェイのミニッツトラック、夜光のアラビア全数字インデックスと続き、最奥部に赤字で24時間のインデックスが追加されています。ケースに負けじと重厚感溢れる文字盤デザインも、この腕時計の個性が際立つ部分でもあります。クラシカルなロザンジュ針のみならず、ユニークなリーフ形のセンター秒針にまで夜光が張られているのもポイント。 搭載するムーブメントMODEL 54は、インペリアル社がA.シルト社のCAL.984をベースムーブメントとして製造した、出車式のセンターセコンドモデル。センターセコンドの秒カナとガンギ車上の穴石に受け石が加えられた17石仕様と、独自のチューンアップが盛り込まれています。ちなみに”KLEIN & MULLER”の刻印は、おそらくこのベースムーブメントを供給した会社と思われます。