1940年代に《シーマ》が英国陸軍に納入したミリタリーウォッチが入荷しています。 シーマは1862年にスイスのル・ロックルで創業した、ジョセフとテオドールのシュウォッブ兄弟の時計工房が母体の時計メーカー。優れた高級腕時計を生産するスイス屈指のマニュファクチュールで、特に英国の宝飾店《J.W.ベンソン》との関係が深く、同社の名前を冠した腕時計はシーマによるものが多いことでも知られています。 こちらは裏蓋にA.T.P.(Army Time Piese)の刻印が見られる、英国陸軍が第二次世界大戦中に実際に使用していた有名なモデル。これとは別に「ダーティ・ダース」と呼ばれる英国陸軍の腕時計は、戦後になってこのA.T.P.モデルをベースとして作られたという経緯があります。実際に使用されることが多かったためコンディションの良い個体が極めて少ないのですが、こちらは奇跡的にも良いコンディションを保っています。 夜光をふんだんに用いた文字盤には、アラビア全数字インデックスとともにレイルウェイ・インデックスが外周部を飾ります。後にブラックダイヤルとなるダーティ・ダースの原型とも言えるデザインと分かります。文字盤の日焼けも味わい深く、むしろこの個体が持つ魅力のひとつとして語れるほどの美しさすら感じます。 またクロームプレートが大半を占める中、オールステンレススチールのケースが採用されている点も見逃せません。マットに仕上げられた無骨な風合いは、小振りながら独得の存在感を放っています。ラグは固定式のミリタリースタイルで、同時代の貴重なナイロンベルトがベストマッチ。 搭載するムーブメントはCAL.162。自社で耐震装置を開発したことでも知られるシーマらしく、テンプの受け石に強固な耐震装置を装備しています。また質実剛健で合理的なレイアウトも特徴的です。