文字盤に見える”WEST END WATCH CO.”と、その下に赤字で記された”LONGINES”の文字。言わずと知れた名門ロンジンがムーブメントを手掛け、外装をウエスト・エンド社が製造した、いわゆるダブルネームの一本。当時大英帝国による植民地支配下のインドにおいて当地にあたった、「インド高等文官」と呼ばれる高級役人向けに製造された貴重なモデルで、裏蓋の"C.S.(I)”という刻印はその役職を意味する”Civil Service in India”の略です。 ウエスト・エンド社は、1886年にスイス・サンティミエで創業された世界で最も古い時計メーカーのひとつとしても有名。主にインドを植民地化していた当時の英国軍向けに腕時計を供給しており、映画「アラビアのロレンス」で知られる当時のイギリス陸軍将校、トーマス・エドワード・ロレンスもウエスト・エンドの腕時計を身に着けていたと言われています。 高等文官という役職を反映してか、品の良いホワイトダイヤルに配されるアラビア全数字インデックスとともに、ブルースチールのリーフ針が印象的。文字盤外周のレイルウェイ・インデックスも、ドットが中心となる上品な雰囲気のアレンジが見られます。一方やや大振りなケースはスクリューバックとパリス管ラグ、内部はムーブメントを包むショックアブゾーバーを装備する堅牢設計。高貴なルックスに頑丈なボディが備わった魅力的な仕上がりです。ケースに若干ポリッシュされた雰囲気がありますが、文字盤も含め良好なコンディションをキープしています。 搭載するムーブメントはロンジンによるCAL.12.68Z。肉厚な粒金仕上げのパーツによって構成される質実剛健なムーブメントで、エッジに至るまで丹念に磨き上げられた美しい仕上がりも特徴的な、ロンジンを代表する傑作機です。軍用機の例に漏れず、ショックレジスト 型の耐震装置をテンプに装備している点も見逃せません。