がっしり、大振り、質実剛健。そんなイメージのステンレススチールケースに、シリンダー形のプッシャーという力強さが際立つクロノグラフ。現在も高い人気を誇る時計メーカー《オーガスト・レイモンド》が1918年に発足させたブランドで、その社名”Auguste Reymond S.A.”の頭文字をとった形が”ARSA"の由来となります。 文字盤デザインは、アラビア全数字の夜光インデックス部分にブラックの隈取りを配した、いわゆるブルズアイ。ケースと文字盤のインパクト勝負は互角、それでいて優美な柿色のカッパーダイヤルが仲を取り持つ。そんな調和のとれた全体感がミソです。若干の経年感が伺えますが、全体的に良いコンディションを保っています。 大振りな腕時計は文字盤のインパクトが噛み合っていない場合が多々ありますが、こちらはその難しさを見事にクリアした好例。メーター類はあえてタキメーターのみを残すことで適度な余白を生み、カッパーカラーの存在感をわずかに高めるという計算されたデザインにも思いを馳せて。 ムーブメントは《ヴィーナス》社のCAL.175を搭載。ブライトリングの人気モデル「クロノマット」のムーブメントとして知られる高級機ですが、こちらは18石という特別仕様。バルジュー72に比肩する古典的なコラムホイール式の機構の傑作。