1940年代、〈テルス〉が手掛けたこちらのレクタンギュラーウォッチ。「フォールフェスト」のモデル名は、落下しても安全という意味で耐震装置をムーブメントに備えていることに由来しています。ほかにもとにかくユニークなポイントが目一杯詰め込まれた一本。しかも着用された形跡がない、ニューオールドストックです。 まず目に飛び込んでくる圧倒的な迫力。全長44.5cmの巨大なレクタングルケースは、手首に沿ってカーブを帯びたカーヴェックス・デザインを採用。そのストイックなタンク・スタイルのシルエットに加え、オールステンレススチール製のボディはノンポリッシュで使用感がなく、その力強く迫ってくる存在感は文字通り圧倒的です。 そしてお気付きでしょうか、固定式のラグ棒が各部2本ずつあるという奇妙な設計も、この個体の大きな特徴。その目的は現在のところ判然としませんが、外側と内側、どちらにもベルトを装着できることから、手首に合わせた2パターンのサイズに対応できるほか、内側のラグ棒に装着するとドライバーズウォッチのような着用もできます。 文字盤デザインも凝っていて、線の細いアラビア数字インデックスに細身のブルースチール製バトン針をセットする、アール・デコの典型的な組み合わせやレイルウェイの効果的な使用が見られるほか、外周部のミニッツトラックをカッパープレートで切り替えたツートーンダイヤルに仕上げています。 あらゆる面で見る者を楽しませるデザイン性とギミックが詰め込まれた、おそらく後にも先にも唯一無二と思われるモンスターウォッチです。 搭載する角形ムーブメントは、テルス自社製となるCAL.640。先述したように、ショックレジスト型耐震装置が装備されていますが、角形時計で耐震装置を有するものは、実はあまり例がありません。